STORY#01
ものをつくる上であってはならない「不良品」。多くの製造企業が不良品ゼロを理想に掲げるが、不良を全く出さないということは実際には相当に困難なことだ。ミズキでは2006年頃から本格的に不良ゼロ化に取り組み、現在では納入先での「不良品ゼロ」は当然のこととなっている。精密部品の業界で不良品ゼロを実現するプロセスとは?その取り組みについて製造技術部 部長 杉本靖夫に聞く。
不良品を作らない
不良品が発生する可能性は製造工程のあらゆるところに存在するが、まずは製造段階で精度を上げ、できる限り「不良を作らない」ことを目指すのが必須だ。
「ミズキの製造現場では不良を最小限に抑える工夫を随所に施しています」
と杉本は言う。
たとえば、機械の整備。毎日の始業点検、月1度の定期点検で機械を最良の状態に保つことはもちろん、場合によっては機械をバラバラにして整備することもある。熟練の技術に加え、体系的な管理体制によって生産設備を最良の状態に保ち、高品質な製品を生み出している。また工程の管理も欠かせない。ミズキでは顧客から提供された図面でなく、全て自社で共通書式の製品加工図を作成し、技術者はそれを基に生産している。それにより製品のバラツキを抑え、均一で精度の高い製品を作ることができる。
不良品を見逃さない
「不良をできるだけつくらない、とは言えどうしても不良品ができてしまうことはあります。そこでポイントとなるのが、不良品が後工程に流れないよう、どうやって防ぐかです」
杉本は不良品ゼロを実現するには、いかにして不良品を見つけるかが大事だと言う。
ミズキでは製造時にすぐさま不良を見つけられるよう、自社で転造機や圧造機をカスタムしている。例えば、製品が流れるレールの数mm上にはセンサーが取り付けられ、少しでも浮きやズレがあると転造機は止まる。また、完成した製品は必ずベルトコンベアを通って受け箱に入るが、このベルトコンベアもミズキ独自のものだという。
「センサーが反応して機械がストップする時にはその前後で不良が発生している可能性が高いんです。ですから機械が止まったら、ベルトコンベアに残っているネジは全て廃棄し後工程に流さないようにします」
このベルトコンベアを導入してから検査段階での不良品は激減したという。
画像選別機をカスタマイズ
まず加工の段階で不良品を出さない、後工程に不良品を流さないことを目指すが、それでもまだ完璧ではなく、数百万に1個、数千万に数個といったレベルで不良が流れてしまうことがある。最終的に不良ゼロを実現するために欠かせないのが、選別機による不良品の検出である。
「十年程前はネジの検査はローラー選別機や目視選別だったため、不良品の流出がとまりませんでした」
やはり、人の手、目だけで不良をゼロに近づけるのは難しい。しかも、カメラ用ネジの大きさはM1.6程度からM0.8へと小型化し、生産量も増加。人の目で不良流出を防げる領域を超えていた。
そこでミズキは短時間に全数選別が可能な自動選別機を導入することにした。しかし、当時はM0.8という微細なネジを効率よく選別できるような選別機はなかった。
「M0.8以下の超マイクロサイズのネジを毎分500本以上検査できることを目標に、設備設計事務所への依頼と検討を重ね、当社の要求仕様にあう画像選別機を製作しました」
市販品でなく、また微細な製品であるため立ち上げには大変な苦労があったが、この画像選別機を導入したことで、短時間で全数選別が可能となり不良品率が下がった。また、画像選別機のお陰で、不良品が見つかるとどの転造機、圧造機で不良が起きたかを割り出すことができ、すぐにフィードバックができる。製品の精度はぐっと向上し、これをきっかけに不良ゼロ化は大きく前進した。
“不良品ゼロは当たり前”という感覚
「以前は少しくらい不良品が出ても仕方がないという考えが一般的でした」
と杉本は言う。
「今でも小さな会社を訪問したりするとそんな感覚の方と会うことがあります。でもそれではやっぱりダメですよね。ものづくりに携わっている者として、不良なものをお客さまには渡せないですよ」
製造現場は常に改善を重ねていくものであり、日々進歩しなくてはならない。社員一人ひとりの、品質に対する向上心があるからこそ、ミズキは不良品ゼロを実現することができるのだ。
「私が理想としているのはネジが一本も落ちていない工場です」
杉本が目を光らせている限り、ミズキが不良品を出荷することはないだろう。