STORY#03
近年、製造業の生産拠点は日本国内を離れ、中国や東南アジアにシフトしつつある。取引企業が海外へ進出するなど、生産拠点の変化は国内の中小企業にも少なからず影響を与えているが、海外企業との取引には言葉や商習慣の違いなどさまざまな壁が立ちはだかる。特に品質保証に対応するにはノウハウが必要だ。管理部 環境品質保証グループ グループリーダー 高梨敏彦に、グローバルな取引への対応方法を聞いた。
海外取引に対応する品質保証
受け入れ検査、出荷検査など品質保証が関わる業務範囲は多岐にわたるが、中でも近年増加する海外との取引において重要になるのが、英語による品質保証書類の提出である。
取引に必須となる書類も多く、書類提出の対応ができないために取引をあきらめるという中小企業も少なくないという。
「海外のお客様から要望が多いのは、主に英語版の環境資料であるRoHS、REACH、Conflict Mineral、それに品質保証データ、書類などですが、弊社ではその全てに対応しています」
と高梨は話す。
中国や東南アジアを生産拠点とする顧客企業の多くは最終製品をアメリカ、ヨーロッパに輸出するため、RoHSやREACHの提出が必須となる。
「例えばRoHSにはICPという分析データが必要ですが、ミズキでは海外の分析機関とのネットワークを活用して、全ての部材について適宜分析しているので、スムーズに書類を揃えることができます」
蓄積された書類作成ノウハウ
品質保証書類の作成にあたってはやはりノウハウがいる。書類に並ぶ技術英語を前にすると英語に堪能な者でもひるんでしまうのではないだろうか。
「技術英語は難しいです。当社も当初は分からない言葉がたくさんありました」
例えば”外径”を意味する「O.D」や”内径”を意味する「I.D」など、辞書に載っていない単語なども頻繁に出てくる。ミズキでは分からない言葉があったらその都度、取引先に聞いたり、調べたりして、各人が技術英語の知識を深めてきた。定型文メールのやりとりでは叶わない知識の蓄積があってこそ、初めて対応できることだ。
また、英語では細かい機械的、技術的なニュアンスが伝わり難い部分がどうしても残る。込み入った説明が必要な場合には、できる限り”絵”や”写真”を用い、誰が見てもビジュアルで、ある程度は理解できるような工夫もしている。
さらに、やりとりも所謂”日本式”ではなく”世界基準”に注意を払うことが必要だという。
「報告ひとつを取ってみても、日本式は”説明”があってから”結果”ですが、世界的には”結果”が先に来て”説明”は後です。当然、英語も必要ですが、お客様が何を求めているのか、世界中を相手にしているお客様が違和感を覚えず、スムーズに理解して頂けるような報告、対応を心がけています」
スピーディーな対応で顧客満足度を上げる
海外企業への対応にはスピードが求められる。最終製品ができるまでには多くのサプライヤーが関わるが、下流のサブサプライヤーになればなるほど上流で生じたタイムラグの影響を受け納期管理が厳しくなる。そのため高梨は緊急の場合には直接海外に電話することが多いという。
また、顧客の先にはその先の顧客がいる。これを意識すると自ずと対応も変わる。例えば日系企業向けに日本語版の品質管理資料を提出していたが、その先の海外の顧客のことを考え、英語の対訳付加に対応したことで顧客から喜ばれたこともある。あるいは、ICPデータの取得には2週間かかるが提出を依頼されてからでは遅いこともあるため、予め取得が想定される場合には先回りして取得し喜ばれたりもした。
「お客様に携帯の連絡先を事前にお伝えし24時間体制で対応したこともあります。自社の休日はもとより、お客様の休日、祝日、時差も勘案して対応することで納期遵守が可能になるのです」
ミズキの細やかな対応を象徴するようなエピソードだ。